555タイマーICと圧電スピーカーでアナログシンセもどきを作ってみる

555タイマーIC(集積回路)を発振回路として使うと、さまざまな周波数の矩形波を作ることができる。 また、圧電スピーカーを使うと、一定の周波数で電圧を変化させることにより音を出すことができる。 ここでは、これらと半固定抵抗を組み合わせ、単純な回路によるアナログシンセサイザーもどきを作ってみる。

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アナログシンセサイザーの仕組み

シンセサイザーには、大きく分けてアナログ回路を用いるアナログシンセサイザーと、デジタル信号処理を用いるデジタルシンセサイザーがある。 また、音を合成する方法にも、基本波形に周波数フィルタをかける減算合成、複数の基本波形を重ねる加算合成、周波数変調(FM)等の変調方式をもとにした変調合成などがある(参考)。

減算合成によるアナログシンセサイザーの仕組みについては、次のサイトがわかりやすい。

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(上記サイトより引用)

上の図におけるそれぞれの回路の役割を簡単にまとめると次のようになる。

  • VCO (Voltage-controlled Oscillator)
    • 正弦波や矩形波などの基本波形を作る。音色、音程に相当
  • VCF(Voltage-controlled Filter)
    • ローパスフィルタやハイパスフィルタなどの周波数フィルタをかける。音のゆがみに相当
  • VCA(Voltage-controlled Amplifier)
    • 波の振幅を変化させる。音量に相当
  • LFO(Low-frequency Oscillator)
    • 1Hz~20Hz程度の低周波数で上記の電圧を変化させる。ビブラートやワウワウ、トレモロに相当
  • EG(Envelope Generator)
    • キーボードを押した後の音の変化を再現する

一般的なアナログシンセはさまざまな基本波形やフィルタを備えているが、ここではできるだけ単純な回路となるように、

  • VCOは555タイマーICによる矩形波のみ
  • VCFは一次RCローパスフィルタ、一次RCハイパスフィルタの組み合わせ
  • VCAはオペアンプ反転増幅回路
  • LFOは555タイマーICによる矩形波に一次RCローパスフィルタ
  • EG、キーボードなし

のアナログシンセもどきを作ってみることにする。

基本回路図

555タイマーICによる発振回路は次で表される。

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OUTからは矩形波が表れ、その発振周波数は 1/(ln(2)*C*(R1+2*R2)) 、デューティー比は (R1+R2)/(R1+2*R2) である。

1次RCローパスフィルタ、一次RCハイパスフィルタは次で表わされる。

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ローパスフィルタはカットオフ周波数を越える周波数成分を弱める働きをする。 一方、ハイパスフィルタはカットオフ周波数を下回る周波数成分を弱める働きをする。 カットオフ周波数はどちらの場合も 1/(2*pi*R*C) である。

オペアンプ反転増幅回路は次で表される。

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マイナスの電圧の -R2/R1 倍が出力電圧として表れる。 また、R3はプラス側とマイナス側に流れる電流の差(バイアス電流)を打ち消すためのものであり、その抵抗値はR1とR2の並列抵抗の値となる。 なお、オペアンプ非反転増幅回路は1未満の増幅率にできないため、今回の例には適さない。

全体回路図

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上の回路では、半固定抵抗でそれぞれの電圧調整を行う。 また、タクトスイッチでLFOのオンオフを切り替え、これに合わせてLEDが光るようになっている。

上の回路において、LFOのOUT(3番ピン)はローパスフィルタを通してVCOのCTRL(5番ピン)に繋がっており、パルス位置変調により発振周波数を揺らす働きをする。 また、タクトスイッチはLFOのVccに繋がっており、オンにすることでLFOが発振する。

発振回路の周波数やRCフィルタのカットオフ周波数は以下のページで計算できる。

上の回路において、半固定抵抗による変域の理論値は次のようになる。

  • VCO: 140.8Hz~5842Hz
  • VCF LPF: 79.58Hz~無限大
  • VCF HPF: 79.58Hz~無限大
  • VCA: 0~100倍
  • LFO: 1.408Hz~58.42Hz
  • LFO LPF: 15.92Hz

実際にブレッドボード上に作った回路の写真を次に示す。

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鳴らしてみる

9V電池を繋いで鳴らしてみると、次の動画のようになる。

半固定抵抗およびタクトスイッチの操作により、それぞれ期待する効果が得られていることが確認できる。

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